生活習慣病というと、心臓病、糖尿病、脳卒中、高血圧などをイメージする方が多いと思います。厚生労働省によると生活習慣病とは“食事や運動、喫煙、飲酒、ストレスなどの生活習慣が深く関与して発症する疾患の総称”とされています。がんも生活習慣と大いに関わりがあり生活習慣病に含まれます。
肥満は消化器がんの危険因子とされています。肥満の程度はBody Mass Index (BMI) (体重[kg]/身長[m]2)で表され、日本ではBMI25以上を肥満としています。2003年に発表されたアメリカの研究では、肥満者は非肥満者に比べがんで死亡する危険性が、男性では食道がん1.9倍、胃がん1.9倍、大腸がん1.8倍、肝臓がん4.5倍、膵臓がん2.6倍、女性では食道がん2.6倍、胃がん1.1倍、大腸がん1.5倍、肝臓がん1.7倍、膵臓がん2.8倍高くなることが示されました。1)糖尿病もがんとの関連が以前より考えられていましたが、2013年5月に学会から糖尿病がある人は糖尿病のない人に比べ、大腸がんで1.40倍、肝臓がんで1.97倍、膵臓がんで1.85倍がんになる危険性が高まると発表されました。喫煙は肺がんの危険因子としてよく知られていますが、実は肺がん以外のほとんどのがんの危険因子でもあり、日本人のがんによる死亡のうち、男性では39%、女性では5%は喫煙が原因だと考えられています。2)また、高濃度の塩分を含む食品をよく食べる人は、胃がんの危険性が高くなります。
このように、生活習慣と胃がんや大腸がんなどの消化器がんとの関連は明らかとなってきましたが、残念ながら皆様にあまり知られていないように思われます。また日常診療をしていると、“血液検査で異常がないからがんは大丈夫“と思われている方も多いようですが、進行がんならば症状や血液検査で異常がでることはありますが、ほとんどの早期の消化器がんでは症状はなく、血液検査でも異常はでてきません。そのため、消化器がんを早期発見するためは、症状のでる前に自ら検査を受ける必要があります。現在、早期の胃がんや大腸がんは9割以上完治し、特に極早期のがんでは開腹せず内視鏡で治療できる時代となってきました。肥満や糖尿病などがんの危険因子のある方は、症状がなくても積極的に胃がん検診や大腸がん検診を受けていただきたいと思います。
文献
1)Calle EE et al. Overweight, obesity, and mortality from cancer in a prospectively studied cohort of U.S. adults. N Eng J Med; 348: 1625-38. 2003
2)Kato K et al. Population attributable fraction of mortality associated with tobacco smoking in Japan: a pooled analysis of three large-scale cohort studies. J Epidemiol; 18: 251-264. 2008