けんぽの部屋
2023年03月29日
「生きることを選ぶこと~自殺対策強化月間に寄せて~」健保常務理事 篠原正泰

健康保険組合は横の連携があって、県単位や全国単位で相互に連絡をとりあっています。

富士フイルムグループ健保は、本部が神奈川工場小田原サイトにあるので、健保の神奈川県の組織である健保連神奈川連合会に所属していますが、そこが発信するブログで、日本発条健保(※1)山田保健師さんが書いたエッセーが、とても印象的でしたのでご本人の承諾を得てここにご紹介したいと思います。

**健保連神奈川連合会ブログより***********************

『生きることを選ぶこと』

金沢区の八景島近くにある職場へは、京浜急行などを乗り継いで通勤している。駅の電光掲示板で「運転見合わせ」という知らせを見かけると、重い鉛を飲み込んだような気持ちになる。京急の人身事故件数は、2020年は28、2021年は33、2022年は27。 2023年は1-2月で既に3(2月7日現在)。県内を走る私鉄では小田急線の次に多いと聞く。他の沢山の乗客たちと同じように改札をくぐりホームに立ち、でも家には生きて帰らなかった人が、統計によると2010年以降で全国累計7,000名を超えている。

当健保組合では「健康白書」で死因の推移を埋葬料から見ている。がんや心筋梗塞などでの死亡による資格喪失者が多いが、毎年自殺者も含まれる。自殺者の中には傷病手当金受給中の者もいるが、精神科の通院履歴が全く無い者もいる。

そういった事実を目の当たりにするとき、私に何かできたことがあったのではないかと自問自答する。事業所ほどにはなかなか直接介入できないが、健保組合の職員としてできることが、何か。

被保険者・被扶養者が暗く長いトンネルにいて、身動きが取れないと思うときに「そういえば相談できるところがあったな」と思ってもらえる情報提供を様々な機会に行うこと。そして、家族や仲間をなくして深い悲しみにある残された人々へのサポート。

自殺する人は、この世にもう安心できる場所がないと考えるのかもしれない。しかし、うつ状態のときに思い詰めて出した結論は、冷静に考えて出した結論ではない。
いま置かれている場所が安心できないのであれば、そこから逃げてほしい。そこだけが居場所じゃない。誰かに気持ちを話して、生きることを選んでほしいと切に願う。

<3月1日~31日 自殺対策強化月間>
厚労省の自殺対策のページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/jisatsu/index.html

(日本発条健保保健師 山田理恵)

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深く感銘をうけながら読みました。
以前は「人身事故」という言葉自体が珍しかったのに、いまでは私の知る東京圏でもそれが日常茶飯事となっていて、「人身事故」イコール「ダイヤの乱れ」としか感じられないほど誰もが慣れっこになってしまっているように思います。

そういった情報に慣れてしまっていることに加え、慣れの中でみんなが″何も感じず″に生きていることの方も怖いことであるように思います。

「人生100年時代」を高らかに謳っている日本。
生活習慣や喫煙に焦点があたりがちですが考えてみれば、そこには予備群の人たちが確実に、そしてたくさんいるのだということでもあります。

山田さんの文中にある健保の「埋葬料」の支払実績を弊健保の2021年度について確認してみたところ、多くはありませんが、被保険者本人や家族で自殺される方が散見され、対岸の話では決してないのだということを目の当たりにします。

山田さんがいわれるように、この世には必ず住まう場所がある、今いる場所だけが生きる場ではない、「そこから逃げても負けではないのだ」ということをいま悩んでいる方々には今一度、考えて戴ければと思います。

富士フイルム健保では、2022年度4月度より新規にメンタル相談専用の窓口を設置しました。この窓口は電話相談もOK, 対面での相談を希望する人にはそれもOKというものです。

機関誌やHPなどで機会があるごとに周知をしながら、すでに一年近くが経過し、毎月数十人の方にご利用いただいています。ただまだまだ、PRは十分ではないと思っています。
(なお、相談内容は個人情報になりますので健保でも把握はできないしくみになっています)

この制度により、悩みを持つそれぞれの方々に寄り添い、そしてその悩みを回避したり軽くしたりといったことができれば大変うれしく思います。(※2)

(※1)日本発条健保:昭和34年(1959)設立。富士フイルムグループ健保と同じ健保連神奈川連合会所属の健康保険組合。
被保険者数約1万名。ブログの転載については日本発条健保、および健保連神奈川連合会の事前承諾を得ています。

(※2)https://www.fujifilm-kenpo.or.jp/kenkou/yobou/fuji_doctor/
(ご利用は、富士フイルムグループ健保加入者に限ります)

以上