けんぽの部屋
2020年10月28日
「3密を避けて紅葉を見にいきませんか?」 健保常務理事 篠原正泰

コロナの騒ぎがなかなか落ち着きません。

引き続き新規感染者は発生していますし、医療提供側などエッセンシャルワーカーの方々は多忙を極めています。

政府は外国人の受け入れ拡大やGoTo施策など経済を回す方策を打ち出していますが、結局のところ、コロナという目に見えない敵とうまく闘うために、ひとりひとりが、自分の環境の中で、新しい生活様式を取り入れて、“生き方”を見つけていくことなのだと思っているところです。

「人類の歴史はウイルスとの闘い」だとも言われていますし、新型コロナにしても第三波・第四波のことも想定していかねばなりませんが、コロナと折り合いをつけ、ストレスからは少し開放された新しい状況に落ち着くことが必要なのかも知れません。

いま、健保で大々的に打ち出していたKencomの「歩活(あるかつ)」もバーチャルなイベントながら、グループ歩行など3密につながる可能性も考慮して春と秋の大会の参加を見合わせました。

リスクを回避することも大事ですが、一方では恐れるあまり「巣ごもり」による運動不足や生活の乱れによる生活習慣病やメンタル面での影響をとても心配しているところです。

自由自在にどこかへ出かけるという状況ではないし、そういう気分ではないという方々も多数おられると思いますが、3密を避けながら野山に出てみてはいかがでしょうか。

自分自身もコロナ禍で遠出は控えていますが、2年前に行った日本百名山の「皇海山」(すかいざん)」の山登りの記録をご紹介したいと思います。

ちょうどいま、日本の各地からは紅葉の便りが聞かれるようになりました。

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『紅葉の皇海山(すかいざん)~2018.10.20の記録』

とある皇海(すかい)山の登山の記録に「林道のアクセスがこの登山の大半を占める」と書いてあって、ホントに?と思っていましたが、まさに「林道を制する者は皇海を制す!」でした。

登山口へのアクセスで通る栗原川林道がとても長い。片道1時間40分。

往復で3時間半ちかくにもなります。
そもそもこの道は、全長で40kmにもなる日本有数の林道だそうで、オフロードバイクのメッカにもなっているほどです。

道自体も荒れています。
中央アルプスの摺古木山登山口への林道も荒れ方では尋常ではなかったのですが、勝るとも劣らずで、地震体験車に乗ったような路面の縦揺れは、坐骨神経痛にはとても悪い。
皇海山の奥深さを、林道がシッカリと教えてくれる登山となりました。

さてこの林道がないころ、深田久弥(ふかだ・きゅうや・日本百名山の著者)は足尾の幽谷に分け入ってこの山に登り、皇海山を「日本百名山」のひとつに列しました。
深田が世に出さなかったらきっと皇海山は山奥に埋もれた「標高のわりに不遇な山」などと評されていたに違いないと感じます。
でも深田は、遠くで鹿が啼き、ぎいと音を立てる枯木に耳をそばだて、苔の倒木をまたぐような登山をする中で、力強いこの山の「静」の表情に惹かれていったんだろうと思いました。

台風で倒れたであろう老木を何本も越えながら登りました。
突然現れたホンドキツネ君はピョンピョンと可愛らしく登山道を横切り、カラマツ林を見上げてみれば樹冠は黄金色に彩っていて山腹のパレットに鮮やかな点描をぽつぽつ落としています。

歩いているとカラマツの針葉がはらはらと絶え間なく降り注いで、同行者の帽子へ肩へと積もっていきます。カエデは、赤ちゃんの手のような黄朽葉を林床に敷きつめて、流れる沢の白い水しぶきとマリアージュしています。

深田久弥の時代から歳月が下って、林道が多くの登山者の歓声を運んでくるようになった皇海山ですが、「静」が見せる表情は深田久弥のころのままだと思いました。

「来てよかったね」と静かな山に感謝し「帰りの林道はまた長いよ、腰に悪いな~」とみんなで笑いあいながら錦繍の登山口へと下っていきました。(2018.10.20歩く)

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(註)皇海山(すかいさん・2144m)は、栃木県日光市と群馬県沼田市との境界にある山で「日本百名山」(深田久弥著)の一つとなっています。上記は2年前の状況ですが、その後、栗原川林道は道路の崩落により通行止となっており、再開予定は今のところ未定のようです。

http://www.city.numata.gunma.jp/kanko/sukai/index.html