私は先日、日本人の平均寿命が男女ともに更新されたという記事1)を読みました。2020年7月31日公表の厚生労働省の「簡易生命表」によると2019年の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳といずれも過去最高を更新。前年に比べて男性は0.16歳、女性は0.13歳、それぞれ寿命が延びています。三大死因であるがんや心疾患、脳血管疾患による死亡率が改善したことが「長寿化」の要因とのことです。厚生労働省が把握する50の国・地域の平均寿命を比較すると、日本人は男性が香港、スイスについで世界3位、女性が香港についで世界2位だそうです。
この記事から、日本は世界有数の長寿大国で平均寿命はさらに長くなっていることが分かります。しかし健康寿命(介護の必要がなく自立して健康的な日常生活が送れる期間)を見てみるとどうでしょうか。健康寿命は男性で72.14歳、女性で74.49歳、男性で8年、女性で12年、病気などによって介護や支援が必要な状態で過ごす年月が長くなってきています2)。この事実をみると、単純に長く生きることだけでなく健康に長く過ごす事が大事なことが分かります。
皆さんは健康寿命をのばすために備えていることはありますか?
健康にとって食事・休養(睡眠)・運動の3つが大切と言われています。私は恥ずかしながら食事と休養については日々気を付けて過ごしているものの、運動については、毎日の通勤で1万歩以上歩いていることに満足し、積極的な取り組みをしないでいました。しかし、先日産婦人科専門医の高尾美穂先生の講演3)を聴き、日々の自分の運動についての考えと、自分の行動を変えるきっかけとなったので皆さんにもご紹介したいと思います。
高尾先生によると、高齢者を支える若者の人口減少により2040年に高齢者になる私たちは今のような介護サービスを受けられるか分からないとのことです。だから「良い人生を送るために皆が良い健康習慣を身に付け、私たち自身が介護の支えがなくても一人で生きていけるような高齢者になることが大切である。そして健康寿命を延ばすことは楽しく良い人生を送ることにつながる」と仰っています。
また高尾先生は、健康寿命をより詳細に定義づけています。先生によると、健康寿命とは、1)自分の足で歩ける、2)自分で食事ができる、3)周囲とコミュニケーションがとれる、4)自分でトイレのコントロールができる、とのことです。そして私が最も感銘をうけたのは先生の「日常は自分の選択した行動で成り立っている」という事です。体調が悪くなり、事が起きてから、「あの時ああしておけば良かった」と、嘆いてもすぐに変えられるものではありません。昨日やったことが今日に影響します。身体のサインを見て見ぬふりをしないことが大切で、今、できる事が分かっているのに備えないでいる事はもったいない事だと仰っていました。
こうして書いてみると当たり前の事と思いますが振り返ってみると運動に対して積極的な行動をとっていない自分に改めて気が付きました。具体的に言うと、いつまでも元気で楽しい人生を歩みたいと思いながら、このところ躓く回数が増えている事を感じています。しかしそれに対して何も行っていませんでした。改めて自分の老いを自分事と捉えることで、「適正体重」や「一日の必要な歩数」を満たすだけでなく、更に健康寿命を延ばすため、毎日の行動を改善しなければいけない、と恥ずかしながら初めて心に響きました。
この講演を聴いたのち、何かできることから始めようと思い、高尾先生の著書「超かんたん ヨガで若返りが止まらない!」4)を購入し、毎日5分、寝る前に本に書いてある簡単なヨガを始めました。初めは出来なかったポーズが少しずつ出来るようになったり、寝る前に体が温まってくる感じを実感できたりと、ずぼらで運動嫌いの私でも取り組みが継続しています。新しい習慣を身に着けた経験から、健康に働き続けるために、そして更にその先の健康寿命を延ばすため従業員の皆さんの毎日の生活習慣改善のサポートをしていきたいと思います。健康寿命を延ばすための素敵なアイディアがある方は是非、健康管理室に共有しに来ていただけたら嬉しいです。
1)『日本人の平均寿命 最高更新』、『朝日新聞』、2020 年8月1日朝刊26p
2)平成30年版高齢社会白書
3)2020年7月18日、WOMENウエルネスライフ研究会3周年記念講演
『生涯を通じた女性の健康で知っておきたい骨盤底筋のこと』による講演内容より
4)高尾美穂『超かんたんヨガで若返りが止まらない!』世界文化社、2019 年