けんぽの部屋
2019年06月04日
「脂質異常症について」 健セ 産業医 森 裕行

日本の死因統計では心筋梗塞、狭心症、脳梗塞などの動脈硬化による病気で亡くなる方が増えています。動脈硬化による病気の危険因子には、脂質異常症、喫煙、高血圧症、糖尿病などがあります。特に、脂質異常症と心筋梗塞や狭心症(冠動脈疾患といいます)との関連は高く、LDL(悪玉)コレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)が高いほど、HDL(善玉)コレステロールが低いほど冠動脈疾患の発症頻度は高いとされています。

LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪には基準値(以前は正常値といっていました)が設定されていますが、検査する施設によって基準値が違うことや、何年か前にはコレステロールの基準値が甘くなったという話題も出て、混乱されている方も多いと思います。日本動脈硬化学会では、LDLコレステロール140mg/dL以上を高LDLコレステロール血症、120~139mg/dLを境界域高LDLコレステロール血症、HDLコレステロール40mg/dL未満を低HDLコレステロール血症、中性脂肪 150mg/dL以上を高トリグリセライド血症としています。以前は、「高脂血症」と呼んでいましたが、低HDLコレステロール血症を含めるため「脂質異常症」と呼ぶようになりました。

同学会では、脂質異常の医学的管理は単純に検査値だけで行うのではなく、リスクを見積もりそれに応じて管理するようにとしています。具体的には、総コレステロール又はLDLコレステロールの値、HDLコレステロールの値、中性脂肪の値、年齢、性別、喫煙習慣、血圧、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴を考慮して、冠動脈疾患の発症リスクを低リスク、中リスク、高リスクに分類して、リスクに応じてコレステロールや中性脂肪の管理目標値を定めています。

同学会より一般の方向けに、冠動脈疾患発症予測ツール「これりすくん」が出されています(「これりすくん」でインターネット検索してください)。総コレステロール又はLDLコレステロールの値、HDLコレステロールの値、中性脂肪の値、年齢、性別、喫煙習慣などを入力すると、10年以内の冠動脈疾患発症確率やリスク分類(低リスク、中リスク、高リスク)が表示されます。中リスクや高リスクと判定された場合には、医師に相談されることをお勧めします。

「これりすくん」:http://www.j-athero.org/general/ge_tool.html