日頃、内科診療や健診後の産業医面談では、間食をやめましょうとか、お酒を減らしましょうとか、我慢の提案が多いのですが、今回は是非食べましょうという提案です。それは食物繊維。
食物繊維って、以前は消化できない「食べ物のカス」というイメージでしたが、最近では、様々な機能を担っていることが少しずつわかってきました。
食物繊維は消化されずに大腸へ到達するので、その網目構造に水分を取り込んで、便を柔らかく量も増やしてくれることで、スムーズな排便に役立っていることは、よく知られているところです。
これは主に水に溶けないタイプの、不溶性食物繊維の働きです。
一方、水に溶ける水溶性食物繊維には、それ以外のいろいろな働きがあります。
まず、食物が胃や小腸を通る時に食物繊維が充分にあると、糖や脂肪の吸収を緩やかにしてくれます。食物繊維の摂取量が少ない人の方が糖尿病になりやすいという報告もあり、カロリーを摂り過ぎることの多い現代人にとっては、肥満も予防してくれる大事な助っ人です。
さらに水溶性食物繊維は、大腸に到着すると、そこで腸内細菌と出会い、腸内細菌によって分解・発酵されて、「短鎖脂肪酸」に変化します。これが大腸粘膜のエネルギー源となるだけでなく、大腸内を弱酸性にして、悪玉菌の増殖を防いでくれたり、他の臓器で糖・脂肪代謝に影響したりと、様々な重要な働きがあることについて研究が行われています。
食物繊維は腸内細菌、特に善玉菌のエサとなり、善玉菌が増えると悪玉菌の勢力が衰え、バランスを改善することで、お腹の調子を整えてくれるのです。
毎日せっせと腸内の善玉菌が喜ぶ食物繊維のエサやりをしてあげたいものですよね。
水溶性食物繊維は、昆布、わかめ、こんにゃく、果物、野菜、大麦などに多く含まれ、不溶性食物繊維は、豆類やキノコ類、野菜、穀物などに多く含まれています。
食物繊維が大切な役割を担っていることがわかってきたので、「日本人の食事摂取基準」で、食物繊維の1日の摂取目標量が設定されました。成人男性で20g以上、女性で18g以上です。
食物繊維20gと言っても、なかなか実際の食べ物でイメージがわきにくいかもしれません。
最近では、コンビニのお惣菜などに、食物繊維量が多いものには量が記載されているものがあります。いろいろチェックしてみて下さい。
開成地区では、社員食堂にお願いして、昨年からメニューのポップに、食物繊維量を記載していただけることになりました。どのメニューに食物繊維が多いか、今日の昼食で1日20gのうち何g摂れたかわかるので、とても貴重です。もちろん同時に総カロリーと塩分量、タンパク質量、脂質量も掲示してくださっています。
写真は、ある日の社食のメニュー(9品目プレート)と、楽しいポップを作ってくださっている食堂の矢野さんです。開成の社食では、野菜が豊富な9品目プレートを毎日提供いただいていて、食物繊維は5~6.5g程です。その他の定食では、食物繊維2.5~5.5g程度。野菜の小鉢でプラスできるのが、嬉しい社食です。
1日20gは、なかなか達成するのが大変ですが、食事の最初に善玉菌が喜ぶ食物繊維をたっぷり食べることを意識して、自然の食物繊維を毎日たくさん摂りましょう。