映画『がんになる前に知っておくこと』の完成披露試写会に行ってきました。
若手の女優、鳴神綾香が、「がんに向き合う人たち」にインタビューを試みて、がんの基本から学んでいくというドキュメンタリー映画です。
鳴神自身「乳がんの疑い」と診断された経験があり、そのときの揺れ動く心情をベースに、患者だけでなく腫瘍内科医、緩和ケア医、専門看護師、ピアサポーター、サバイバーまであらゆる「がんに関わっているすべての人たち」に対し、“がんとは?”をビギナー視点から訊く作品となっています。
映画を作った上原プロデューサーは、4年前に義妹をがんで亡くし、それをきっかけに「がんに向き合おう」とこの映画作りに入りました。
ありがちながんの映画とせず「身近な人ががんになったら、果たしてどうしたら良いのか?」を発信していくガイド的なものも作ろうという試みでもあります。
たとえば「抗がん剤は今、いくつあるか知っていますか?」と映画は問います。
実は130種類もあると言われており、その効果や、効果が発現する体の部位、患者さんの適性や体調・副作用など、さまざまな選択が可能な世の中になっていることを教えます。
あるいは国立がん研究センターは、全国で400か所あるがん診療連携指定病院でもあるのですが、この機能を知っていますか?と問います。
そこには「がん相談支援センター」が置かれていて、その病院に何の関係がない人でも気軽にコンタクトし相談にのってもらうことができることを教えます。
他の病院の患者が匿名で相談にのってもらえる、セカンドオピニオンを求める人に適切なアドバイスをしてくれる場所になっています。
緩和ケアについても丁寧に説明します。末期がんというイメージはもはや過去のものであり、今やがんとの闘病をどう痛みなく過ごすのか、という支持療法の領域にもなっていて、緩和ケアの利用のしかたでQOL(Quality of life=日ごろの生活の質・ひいては人生の質)に大きな違いが出るとも言われています。
「がん」は「共存できる病気」と言われるようになりました。
その情報は簡単にインターネットでも手に入るようにもなりました。
一方で怪しい情報も溢れていて、何が正しい情報なのかを見極めるのが難しい時代に突入したとも言えます。
「共存のあり方」にも幅が生まれ、手にする情報の種類・量・質次第で、生活の質や人生の過ごし方にも違いが出てくる時代とも言えるようになってきました。
二人に一人ががんになるほどに一般化した時代だからこそ、医療者まかせでなく、患者である自分自身が正しい情報を見極める力を養い、得られた情報の中から後悔しない選択をする。
そして“自分流”に生きていくことが求められていると思いました。
“がんは一つでも、生き方はがん患者の数だけある”
それがイマ流の「がんとのつきあい方」と言えそうです。
<参考情報>
■ドキュメンタリー映画『がんになる前に知っておくこと』2019年2月2日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国順次公開
■フェイスブックページ https://www.facebook.com/ganninarumaeni/
■公式サイト http://ganninarumaeni.com/
(※)本稿は映画関係者の事前了解を頂いております。