けんぽの部屋
2026年10月20日
「心と体はつながっている?」 富士フイルム健康管理センター 公認心理師 佐竹葉子 


こんにちは、富士フイルム健康管理センター カウンセラーの佐竹です。

「大事な会議の前になると、お腹が痛くなる」
「仕事の締め切りに追われていると、喉がギュッと締め付けられる感じがする」
このような経験はありませんか?
心身の不調を感じたとき、私たちは「体の問題」か「心の問題」かに分けて考えがちです。診療科も、内科や整形外科、精神科・心療内科などに分かれています。ただ、医療現場では、「どちらともつかない」不調が意外に多くあります。心と体のどちらか一方だけでは説明しにくい不調も少なくありません。


心の
状態は、体の反応に影響を及ぼす
私たちの「心の状態」と「体の反応」は、別々に存在しているわけではありません。私たちの体には、緊張や不安、安心感などを感じ取って、心拍・呼吸・胃腸の働き・筋肉の緊張などを変化させる仕組みがあります。心と体は、生物学的にも密接に関わっているのです。

そのため、「胃が痛くて消化器内科で胃薬をもらったけれど、なかなか良くならない。検査をしても異常がないため、ストレスが原因かもしれないと言われ、心療内科を紹介された」というケースは、決して珍しくありません。うつ病などの精神的な不調を抱えている人の中には、初めから精神科・心療内科を受診するのではなく、身体症状をきっかけに内科を受診し、そこから精神科・心療内科を紹介される人も多いのです。

専門的には、心理的なストレスや心の状態が身体症状として表れることを「身体化(somatization)」と呼ぶことがあります。心理学や精神医学、心理療法の領域では、心の状態や体験が身体感覚・身体反応として表れることを指します。

たとえば、
・胸や喉が締め付けられるように感じる
・体が重く感じる
・肩に力が入っていることに気づく
・不安になると呼吸が浅くなる

といった身体感覚に注目することで、自分の心身の状態を理解しやすくなることがあります。
「体が何らかのサインを出している」と考え、そのサインに気づきながら、必要に応じて心の不調にも向き合うことが大切です。

 

身体からのストレスサインをキャッチしよう
では、日々の生活の中で、どのようなことに気をつけたらよいのでしょうか。
忙しい毎日の中で、自分のストレスを自覚できればよいのですが、気づかないまま溜め込んでしまうことも多いはずです。それでも、体からのサインが出ているときは、まずそのサインに気づくことが大切です。そのためにできることを考えてみましょう。

 

心身の変化を記録する

まず「記録する」ということが有効です。手帳でもスマートフォンに簡単にメモするだけでもOKです。たとえば、
・いつ症状が出たか
・どのような症状だったか
・そのとき何をしていたか
・睡眠時間や食事の状況
・そのときの気分や考えていたこと  など

記録を継続していくと、自分のパターンが把握できるようになり、自覚につながります。たとえば「睡眠が不足すると動悸を感じやすい」など、自分なりのパターンに気づけることがあります。
パターンが分かると、早めに休憩を取る、予定を調整する、誰かに相談するなど、対策を考えやすくなります。

 

自分の気持ちを大切にする

「心」は、気持ちや感情と深く関わっています。
私の体験談をお話しします。子どもが赤ちゃんだった頃、心臓が一瞬ドクンとする、脈が飛ぶといった症状、いわゆる不整脈が何度も続いたことがありました。「重大な心臓の病気だったらどうしよう」と心配になり、循環器内科で心電図検査を受けましたが、異常はありませんでした。「気のせいではないはずなのに」と悩みましたが、よく考えてみると、産後で体が弱っていたこと、夜間授乳で寝不足だったこと、子どもから目が離せず常に緊張していたこと、自分の自由な時間が少なかったことなど、さまざまなストレスと疲労が蓄積していたのです。育児に必死で、自分自身を振り返る余裕すらありませんでした。そんな自分の状態に気づき、休息が必要だと自覚することで、症状は徐々に治まっていきました。そのときに感じたのは、「体はサインを出してくれていたのに、自分を後回しにしていた」ということです。必要だったのは、「頑張っている自分をいたわる気持ち」を大切にすることでした。自分の気持ちや心身の状態を自覚することで、症状が改善する場合もあります。

 

ただし、注意点があります
体の症状を「心のせい」と決めつけすぎないことも重要です。
安易にストレスが原因だと考えてしまうと、実際には重大な身体疾患が隠れている可能性を見落とすことがあります。たとえば、うつ状態だと思っていた人が、実は甲状腺機能低下症だったというケースもあります。そのため、気になる症状がある場合や、症状が続いている場合は、まず身体的な病気が隠れていないかを医療機関で確認することが大切です。

 


忙しい日々の中で、
「今、私の体は何を知らせてくれているのだろう?」
と、少し立ち止まって確認してみましょう。
体の感覚に気づくことは、「自分をいたわる第一歩」になります。