けんぽの部屋
2026年3月24日
「健保の部屋」のドアは開けたままで 健保理事長付 篠原正泰

この3月をもって、12年にわたりお世話になった健康保険組合(以降健保)を卒業し、このブログコーナー『健保の部屋』も後にすることとなります。

最後の感想は?と問われたとしたら、ビジネスマン生活の最後、10年以上にわたって加入者の皆さんの健康に携わることができてとても満足しています。
すべからく諸事多様な意見があったりしますが、こと健康の重要性に関しては誰もが異論を唱えない、何をおいてもいちばんに置かれるその存在のクリアさ、それを仕事にすることのやりがいや社外の人たちとの出会いが何よりも好きでした。

一方である意味「健康」はやっかいなもの、あって当たり前、病気になったとたんに大騒ぎになるといった「空気」のような存在でもあり、たとえば若年層に「健康」に対する意識を喚起するとなると、なかなかやっかいな存在という見かたもできたりします。

わずか10年ほど前、健保に来たころは、いま経営課題で重要視されている「人的資本」なる言葉もメジャーでなく、「健康」は個人の問題で、自分でテイクケアした上で勤務に臨むが当たり前という世相だったと思います。

その考え方が主流だった中で、ひずみや問題点も世の中的に指摘されるようになり、何より「人」が大事、人の健康こそ企業のベースとなる、それなくしては経営が立ち行かないという極点まで行きついた、その変化は「桑田(そうでん)変じて滄海(そうかい)と為す」のたとえではないですが、ホントウに世の中の大きな大きな変化であったと感じています。

この変化は、やがて「健康経営」というコトバに昇華され、健康経営銘柄や健康経営優良法人などの褒章制度も登場して(富士フイルムもしっかり取得できています)、健保業界的な視点からもとても嬉しいことでありましたし、また本来あるべき姿に移行してきた!ことについて貴重な“世の中の気づき”だったと実感しています。

今後も国では高齢者の医療制度の改革など、大変重大な課題が検討されていますが、国民がひとりひとり健康に留意する文化(セルフメディケーションだとか健康診断をきちんと受けるだとかがそれに当たると思っています)を作りながら、一方では少子化する若い人たちにシワ寄せしない形で健康保険がいつまでも、きらりと光り続ける、感謝される制度であり続けることを心から願っています。

実はただ願うだけではだめ、健保も攻めに転じようということで、昨年健保連(全国1400健保の連合体)が先頭にたってポスト2025健保連提言「3つのお願い」「4つの約束」「5つのチャレンジ」(※末尾)を発表しました。
細かく説明することは紙幅が許しませんが、一例をあげれば「健保からの発信をもっと積極的にやっていこう」という項目もあがっています。

実はこの場所「けんぽの部屋」は(姉妹版には「けんぽの知恵袋」ブログもあります)産業医のS医師と相談し、対外発信の重要性にかんがみ 医療のちょっとした気づきから・ざっくばらんなアドバイス、それに加えて健保に携わる職員たちの毎日の発見や苦労、生活、悩み、喜びなどをお伝えしようと8年前から始めたものです。

気を付けてきたことは、ありのままの、本音の、そして現場のナマの声をお届けしよう目論んできたことでした。そもそも健保は、「厚生労働省の公法人」という組織ゆえお役所の通達や難しい医療業界の情報はあふれています。
一方で“健保の毎日”や“働く人の思い”をお知らせする場が、皆無といって良い状況だった、そこのフタを少し開けてみようということだったと思います。

全国には1400ほどの健保がありますが、どの健保も毎日真面目に、ミスひとつ出さないように、苦労しているのに、外から見るともしかしたら機械的な組織のように見られていたかも知れません。
実際、自分が健保に入職するまでは、漠然とそんな感じがしていましたし、控えめな健保が多いためかPRもしないので内容を知る由もありません。

実際には毎日職場ではいろいろな事が起き、いろいろな悩みがあり、いろいろな夢を描きながらも苦労する毎日があるわけで、そこには笑いがある一方、浸透していかないマイナ保険証や下がらない喫煙率の対応策に眉間に皺を寄せる会議があったり、時にはお叱りを受けて冷や汗をかいている人がいる職場なのです

「けんぽの部屋」でかつて松任谷由美さん(ユーミン)のことを書いたことがありました。
https://fujifilm-kenpo.or.jp/news2/room_20181105/

いまの日本は感染症から生活習慣病へと国民の病態が移行し、その影響が地方地方で出始める世の中になるけれど、ユーミンの歌詞のようにそれを「さらり」とよそ風のように受け止められる世の中になるといいな、ということを書いたものでした。
ある時、「ユーミンのブログを読んで私もとても元気が出ました」という無記名のハガキをもらったことがありました。
出してくれた方は文面から見て、あるいは重大な病に悩んでいたかも知れないけれど、少しだけでも元気にできたら、こんなイイ事はないなと思いました。

今月、私は健保を退任し、「健保の部屋」を出ていきますが、その後ろ手でドアを閉めることはありませんし、いつでもだれでもドアや窓が空いている『健保の部屋』を訪れて、書かれている内容に「ふむふむ」だとか「それは違うんじゃない」とか、「健保や健セ(病院)も良く頑張っているね」とかを感じて欲しい、と思っています。

コメント欄もイイね!もありませんから、「けんぽの部屋」を訪問する誰かが何を感じてくれるかは分かりませんが、一人が訪れれば、その分、自分たちの健保(病院組織の健セも含む)の仲間が増えていく、それも健保の「5つのチャレンジ」の発信活動の一端だと思っている自分がいたりします。


(※)<参考>ポスト2025健保連提言「3つのお願い」・「4つの約束」・「5つのチャレンジ」

◆国民に対する3つのお願い

①医療費・健康保険制度のしくみをもっと知ってください

②自分自身で健康を守る意識をもってください(健康診断を受けましょう)

③軽度な身体の不調は自分で手当てをするセルフメディケーションを心がけてください

 

◆健保の4つの約束

①各種健診の促進をします

②ひとりひとりに丁寧な保健指導を実施します。

③予防・健康づくりの情報を提供します

④予防・健康づくりについて事業主(会社)と連携して取り組みます

 

◆健保の5つのチャレンジ

①多様な働き方に即した保健事業の充実

②かかりつけ医との連携

③健保の発信力強化

④データ分析強化による加入者サービスの充実

⑤デジタル化による健保組合の業務革新